題 名 東京名所 浅草寺境内弁天山 作者名 昇斎一景
所在地 浅草2丁目(浅草公園地) 制作年 明治4年8月(1871年8月)

本堂南東にある小高い丘は、弁財天を祀る弁天堂が建つことから弁天山と呼ばれています。 弁財天は池中の小島に祀られることが多いのですが、弁天山もかつては池の中にありました。 現在、池は埋め立てられて公園となっています。 弁財天は七福神のなかの唯一の女神で、弁天堂のご本尊は白髪であるため、「老女弁天」と通称されています。 手先が器用な神さまであることから、芸術的分野での才能を伸ばしたいときにご利益があるとされています。

この弁財天は神奈川県藤沢市の江ノ島弁天、千葉県柏市の布施弁天と並んで「関東の三弁天」として名高いものです。 弁天堂に向かって右手に鐘楼があり、そこに掛けられている鐘は「時の鐘」です。 鐘は元禄5年(1692)に五代将軍徳川綱吉の命により改鋳され、江戸の市中に時を告げていた鐘のひとつで、深川に居を構えていた松尾芭蕉が「花の雲 鐘は上野か 浅草か」という句を詠んでいます。

 戦時中、多くの寺の鐘が供出を余儀なくされたなかで、弁天山の「時の鐘」は特に由緒がある鐘ということで残され、現在も毎朝6時に役僧によって撞かれており、大晦日には新年を告げる「除夜の鐘」が鳴らされています。